インプラント治療は、失った歯の機能と審美性を回復させる有効な手段です。
しかし、その快適さと機能性を長く維持するためには、インプラント特有のケアが欠かせません。
治療後も健康な状態を保つためには、インプラント周囲で起こりうるトラブルへの理解と、日々の適切な対策が重要となります。
今回は、インプラントの周りで発生する可能性のある歯肉炎について、その原因や進行、そして効果的な予防策を詳しく解説します。
インプラント周囲の歯肉炎とは
インプラント周囲粘膜炎と周囲炎の違い
インプラント周囲の歯肉炎には、症状の進行度によって二つの段階があります。
初期段階は「インプラント周囲粘膜炎」と呼ばれ、インプラント周囲の歯肉に赤みや腫れが生じ、歯磨きの際に簡単に出血する状態です。
この段階では、インプラントを支える骨(歯槽骨)にはまだ影響はありません。
しかし、炎症が進行すると「インプラント周囲炎」となり、歯肉の炎症が歯槽骨にまで広がり、骨が溶け始めます。
症状はさらに進行し、歯茎から膿が出たり、インプラントがぐらついたり、最終的にはインプラントが抜けてしまうこともあります。
歯肉炎を引き起こす原因菌
インプラント周囲の歯肉炎の主な原因は、お口の中に存在する細菌、特にプラーク(歯垢)の蓄積です。
これらの細菌は、天然歯の歯周病を引き起こす菌と類似していることが指摘されています。
天然の歯には歯と骨の間を繋ぐ「歯根膜」というクッション組織がありますが、インプラントは顎の骨と直接結合するため、歯根膜がありません。
この構造の違いから、インプラント周囲は天然歯に比べて細菌が侵入しやすく、プラークが溜まると歯周病菌が増殖し、インプラントを支える骨を破壊する原因となります。

インプラント周囲の歯肉炎を防ぐには
日常のセルフケア方法
インプラント周囲の健康を維持するためには、毎日の丁寧なセルフケアが不可欠です。
特に、歯ブラシの毛先をインプラントと歯肉の境目(歯周ポケット)に当て、優しくかき出すように磨くことが重要です。
力を入れすぎるとインプラント体が露出したり、歯肉を傷つけたりする可能性があるため、注意が必要です。
歯ブラシの毛先は歯肉に対して45度の角度で当てると効果的です。
歯ブラシだけでは届きにくい歯と歯の間には、歯間ブラシを併用して徹底的に清掃しましょう。
インプラントの形状や清掃箇所は天然歯と異なる場合があるため、一度歯科医師に確認することをおすすめします。
定期的な歯科メンテナンスの重要性
日常のセルフケアだけでは、どうしても落としきれない汚れや歯石が存在します。
そのため、インプラントを長持ちさせるためには、定期的な歯科医院でのメンテナンスが極めて重要です。
歯科医院では、レントゲンで骨の状態を確認したり、専用の器具で歯石を除去したりします。
また、インプラントがネジで固定されている場合は、ネジの緩みがないかチェックし、過度な力がインプラントにかかっていないか噛み合わせも確認します。
これらの専門的なケアを受けることで、インプラント周囲炎の早期発見・早期治療に繋がり、重症化を防ぐことができます。
まとめ
インプラント周囲で起こる歯肉炎は、初期には粘膜の炎症(周囲粘膜炎)として現れ、進行すると骨の破壊を伴うインプラント周囲炎へと悪化する可能性があります。
これは、インプラント周囲に溜まった細菌性のプラークが主な原因です。
せっかく治療したインプラントを長く健康に保つためには、毎日の丁寧なセルフケアはもちろんのこと、歯科医院での定期的なメンテナンスが欠かせません。
専門家と連携し、適切なケアを継続していくことが、インプラントの予後を大きく左右します。