インプラント治療を検討する際、「副鼻腔に貫通する可能性がある」と言われて戸惑ったことはありませんか。
上顎の治療ではこうしたケースが発生することがあり、術後の不調やトラブルにつながることもあります。
しかし、事前の診断や適切な対処法を知ることで、多くのリスクを回避できます。
今回は、副鼻腔との関係や万が一の対処法についてご紹介します。
インプラントと副鼻腔の関係を理解する

*副鼻腔とは何か
副鼻腔とは、顔の骨の内部にある空洞で、鼻とつながった空気の通り道です。
上顎の奥にある「上顎洞(じょうがくどう)」は副鼻腔のひとつで、インプラント治療の際に特に関係が深くなります。
空洞のため骨が薄くなっている部分があり、手術時の注意点になります。
*上顎インプラントが副鼻腔に近い理由
上顎の奥歯が抜けると、歯槽骨という骨が次第に吸収されて薄くなります。
一方、副鼻腔は加齢とともに広がる傾向があり、骨の厚みがさらに減少します。
そのため、インプラントを埋入しようとすると、上顎洞と非常に近い位置になり、場合によっては骨のすぐ向こうに空洞がある状態となります。
*副鼻腔に貫通するとはどういうことか
骨の厚みが足りない状態でインプラントを埋入すると、先端が副鼻腔の中に突き出してしまうことがあります。
これが「副鼻腔への貫通」です。
完全に中まで出てしまうケースもあれば、わずかに突き出る程度の場合もありますが、いずれも体への影響を及ぼす可能性があります。
副鼻腔に貫通した場合に起こる問題と症状

*インプラントの不安定化と副鼻腔炎のリスク
副鼻腔に貫通すると、インプラントが本来の骨の中にしっかり固定されず、不安定になる恐れがあります。
また、副鼻腔に異物が入り込むことで、炎症が起こりやすくなり、副鼻腔炎(蓄膿症)を引き起こす可能性も高まります。
慢性化すれば、頭痛や倦怠感、鼻づまりなど日常生活に影響する症状が出ることもあります。
*鼻水・違和感・感染などの主な症状
副鼻腔にインプラントが貫通すると、術後に鼻水が増えたり、鼻の奥に違和感を覚えることがあります。
放置すると細菌が侵入し、感染が起こることもあります。
また、インプラント部位の痛みや腫れを伴うこともあり、鼻と口の間に異常を感じるケースも報告されています。
*症状が出るタイミングと進行のパターン
症状は術直後から現れることもあれば、数週間〜数ヶ月後に徐々に出てくる場合もあります。
初期のうちは軽度の違和感や鼻づまり程度であっても、炎症が進行すると慢性副鼻腔炎に移行する恐れがあります。
違和感を覚えた時点で早めに歯科医に相談することが重要です。
副鼻腔への貫通を防ぐ方法と起きたときの対処法

*CT撮影と術前診断の重要性
副鼻腔への貫通を防ぐには、事前の精密な診断が欠かせません。
特にCT撮影による三次元的な画像診断は、骨の厚みや副鼻腔との距離を正確に把握できます。
平面のレントゲンでは見えない情報も確認できるため、インプラントの安全な埋入計画に大きく役立ちます。
*サイナスリフトなどの処置方法
骨が足りない場合には「サイナスリフト」と呼ばれる方法で骨を増やす処置が選ばれます。
これは副鼻腔の粘膜を押し上げて、その下に骨補填材を入れ、インプラントがしっかり固定されるようにする方法です。
直接的な貫通を避けるための技術として、経験豊富な医師による処置が求められます。
*トラブル時の適切な歯科医院の選び方
万が一貫通してしまった場合や症状が出た際には、口腔外科的な知識と副鼻腔への対応経験がある歯科医院の受診が望まれます。
治療設備の整った医院や、CTによる診断ができる医院を選ぶことで、的確な対応を受けることができます。
実績や症例数も判断材料になります。
まとめ
インプラントが副鼻腔に貫通するリスクは、特に上顎の治療において考慮すべき要素です。
しかし、術前の診断や適切な処置を行うことで、多くのトラブルは予防可能です。
万が一症状が出た場合も、早めの相談と対応で重症化を防ぐことができます。
正しい知識と準備が、安心して治療を受けるための鍵となります。